【全日本モトクロス選手権 第6戦決勝レポート】
2023 D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ
第6戦 近畿大会
2023年9月9日(土)~10(日)
奈良県/名阪スポーツランド
天候:曇り時々晴れ一時雨
気温:29度
コースコンディション:ドライ
観客:2,050人
2023年の全日本モトクロス選手権シリーズは、6週間のサマーブレイクを終え、第6戦近畿大会が奈良県の名阪スポーツランドで実施された。
三重との県境に近い山中に設けられたコースは、サンド質の路面が大きな特徴。レイアウトの基本構成は昨年9月の全日本開催時から引き継がれ、幅が狭くテクニカルな設定となっていた。金曜日の降雨により、各クラスの予選などが実施された土曜日の朝は砂に水分が多く含まれた柔らかい路面状況。ただし、水はけの良さと晴れて上昇した気温によりすぐに回復し、決勝が繰り広げられた日曜日に向けて事前に散水作業が必要なほどだった。その日曜日は曇りまたは晴れで、昼前後には一時的に雨が降るという、目まぐるしく変わる天候。とはいえ、降雨による路面状況変化はほとんどなく、最初から最後までほぼベストなコンディションが保たれた。走行によりサンド質の路面には多くの深いワダチやうねりのようなギャップが刻まれ、この攻略も上位進出のカギとなった。
Westwood MXは今季、全日本最高峰クラスのIA1に「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」から参戦する富田俊樹選手(#1)と渡辺祐介選手(#3)、ホンダサポートチームの「Honda Dream Racing Bells」からエントリーする大城魁之輔選手(#4)と、プロモーションライダー契約を締結。また、昨年度のIA2クラス王者で今季は「YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM」から選手兼監督としてIA1にフル参戦するジェイ・ウィルソン選手(#27)に、100%ブランドのゴーグルをサポートする。ただし、開幕戦で転倒負傷した渡辺選手は、ライディングは再開しているものの、今大会も欠場となった。
さらにIA2クラスでは、カワサキのマシンを駆り「ピュアテックレーシング」からチャンピオンを狙う西條悠人選手(#8)とプロモーションライダー契約を結び、レース活動をサポートしている。
IA1クラス ヒート1
【IA1 ヒート1】
スタートで出遅れた予選は5番手となったジェイ・ウィルソン選手(#27)だったが、決勝ヒート1ではホールショット。大城魁之輔選手(#4)がこれに続いたが、すぐに3番手へ後退した。序盤、ウィルソン選手はハイペースでの周回を続けて後続とのギャップをじわじわと拡大。レースが中盤に入るころまでに、6~7秒のアドバンテージを築いた。一方、大城選手は2番手の選手に6秒ほど離され、その後方を1名のライバルがマーク。7周目には逆転を許したが、ここで離されることなく周回し、11周目に再逆転した。レース終盤、2番手のライダーがペースダウンし、これで一気に接近した大城選手が、15周目に2番手となった。そして30分+1周のレースは20周でチェッカー。危なげなく逃げ切ったウィルソン選手が優勝し、大城選手が2位に入賞した。富田俊樹選手(#1)はペースが上がらず、9周目には6番手後退。しかし抜かれた相手が16周目に転倒したことで、5位フィニッシュとなった。
IA1クラス ヒート2
【IA1クラス ヒート2】
ホールショットを獲得したのは、再びジェイ・ウィルソン選手(#27)。富田俊樹選手(#1)も好スタートを決め、1周目を3番手でクリアしたが、大城魁之輔選手(#4)は出遅れて10番手からの追い上げを強いられた。このヒートでも、ウィルソン選手はレース序盤からハイペースで周回を重ねてリードを拡大。最初の5周で5~6秒のアドバンテージを築いた。一方、富田選手はレース序盤の段階で2番手から10秒以上遅れ、3番手をキープ。背後では1名のライバルがマークを続けていたが、これを先行させることなく周回した。レース終盤、ウィルソン選手は完全に独走状態。最後までトップを快走し、再び20周でチェッカーとなったレースで勝利を収め、開幕からの連勝記録を「15」に更新した。富田選手は、終盤にライバルを引き離して2位。大城選手は追い上げが振るわず、7位に終わった。
IA2クラス ヒート1
【IA2クラス ヒート1】
30分+1周で競われたヒート1。西條悠人選手(#8)はスタートで出遅れ、1周目12番手からのレースとなった。序盤、西條選手は10台ほどが連なる4番手争いの集団に加わり、5周目には11番手にポジションアップ。しかしその後、前を走るライダーを抜きあぐねて10番手争いの集団にとどまり、一時は13番手に順位を下げた。レース終盤の17周目、前方の集団で転倒による後退があったことからひとつポジションを上げたが、西條選手は20周のレースを12位でゴールすることになった。
IA2クラス ヒート2
【IA2クラス ヒート2】
西條悠人選手(#8)は好スタートを決めて1周目を2番手でクリアすると、2周目にはトップに浮上。3周目まで先頭を走った。4周目に2番手に後退した西條選手は、6周目に5番手後退。その後もライバルの先行を許し、12周目には9番手まで順位を落としてしまった。レース終盤、西條選手はペースが落ちた前のライダーに接近。このライダーの攻略には至らなかったが、ラスト2周で上位勢に2台の転倒後退があったことから、西條選手は19周で終了となったレースを7位でフィニッシュした。
ジェイ・ウィルソン選手(#27)ヒート1=優勝/ヒート2=優勝
「前戦終了後、全日本モトクロス選手権が夏休みの間に、渡米してAMAプロモトクロス選手権に参戦。テストを含め、非常に難しい挑戦になったのですが、その最後で足首を負傷してしまいました。とはいえ今大会も、従来と変わらずシリーズタイトル獲得に向けて確実にポイントを積み重ねることが最大の目標。予選は5番手と、あまりいい結果ではありませんでしたが、決勝は自分が持つすべてのエネルギーを使いました。スタートがとくに重要と考え、ホールショットを獲得することにこだわって取り組んだのですが、両ヒートでそれが実現できたことで、まずは勝利が近づきました。さらに、前半の15分でいいラップタイムが刻めたことも、最高の内容で勝てた要因でした。次戦も、集中力を保ち好成績につなげます」
富田 俊樹 選手(#1)ヒート1=5位/ヒート2=3位
「土曜日の段階では、ジェイ・ウィルソン選手の調子があまり良さそうではなかったので、予選トップだったこともあり勝利のチャンスがあるかと思ったのですが、幻想でした。土曜日はまだ路面がきれいでしたが、日曜日はかなり荒れ、これに対応できませんでした。どことなく恐怖感のようなものがあり、実際にヒート1はクラッシュ寸前のシーンも……。ヒート2は表彰台に立つことはできたものの、走りは同じような状態で、前の2台についていきたくて、彼らのラインをトレースするなど工夫はしていたのですが、それでも速く走る方法を見つけることはできずに終わりました。不本意なレースになってしまいましたが、次戦は立て直します。使用するウエアが、今回から2024年モデルになりました。機能面では従来モデルを踏襲しているのですが、以前から運動性は秀逸ですし、デザインは相変わらずカッコよく、とくにヒート2で着用したブルーはお気に入りです」
大城魁之輔選手(#4)ヒート1=2位/ヒート2=7位
「第4戦中国大会で鎖骨を折り、欠場は免れたものの、第5戦北海道大会は明らかに遅かったので、そこから今大会までの6週間は、とにかくスピードと体力を元に戻す努力をしてきました。自分ではだいぶいい状態に仕上がっていると感じながら臨んだこの大会で、ヒート1では2位を獲得できたので、その感覚に間違いはなかったと一度は思ったのですが……。ヒート2はとても酷い走りをしてしまい、実力不足を痛感しました。スタートで出遅れ、その後はまるでうまく乗れず、それなのに無理してペースを上げようとして転倒寸前。それでビビりながらも再びペースを上げようとしてまた転びかけて……と、どんどん自分にブレーキをかける方向になってしまいました。とりあえず表彰台には戻ってこられたので、再び課題克服に努めます」
渡辺祐介選手(#3))欠場
「応援してくださっている皆さま、欠場が続いていて申し訳ありません。開幕戦で転倒し、膝と腕の骨や靭帯を負傷。現在は、復帰に向けて調整を続けているところです。完治という意味ではまだ先なのですが、8月中旬あたりからようやくバイクに乗れるようになり、じつは今大会の事前テストにも参加。ただし、まだ状況が整わないということで、この大会も欠場することになりました。復帰の時期がまだ不透明なことが心苦しいのですが、ようやくライディングを再開し、現在はベストの6~7割くらいまで戻せたという印象。トレーニングもかなりできるようになってきたので、いましばらくお待ちください。チームメイトが速いですが、復帰したら負けないように最高の走りを披露したいと思います」
西條 悠人 選手(#8)ヒート1=12位/ヒート2=7位
「予選、決勝ともにスピード不足。ヒート1はスタートで出遅れ、ペースを上げられずほぼそのままの順位で終えました。気持ちを切り替えて臨んだヒート2はスタートが決まり、2周目にトップ浮上。自分にスピードがないことはわかっていたので、抑えた堅実な走りをしてもすぐに抜かれてしまうと思い、100%以上の走りでとにかく逃げてみようと考えました。その結果、レース中盤には早くも体力的にかなり厳しい状況となってしまい、大幅にポジションダウン。ラスト2周で上位勢が2名転倒したのに、それでも7位でした。この夏、かなりトレーニングを続けてきて、自信はあったのですが、勝負になりませんでした。次戦は、開幕で優勝したコース。約1ヵ月間、やれることを徹底的にやって上を目指します。今回から2024年モデルのウエアとなり、カラーリングの印象がかなり変わりました。色使いがかなり派手になったので、ウエアに負けず走りでも目立てるよう頑張ります」