【全日本モトクロス選手権 レポート】
2023 D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ
第7戦 HSR九州大会
2023年10月8日(日)
熊本県/HSR九州
天候:雨一時曇り
気温:19度
コースコンディション:マディ
観客:846人
IAクラスは全9戦が設定されている2023年の全日本モトクロス選手権シリーズは、シーズン終盤戦に突入。第7戦HSR九州大会が、今季開幕戦の舞台ともなった熊本県のHSR九州で開催された。
今大会は日曜日のみのワンデープログラムとして、IA1クラスとIA2クラスに限定して実施。両クラスとも、公式練習を兼ねた20分間のタイムアタック予選、20分+1周の決勝ヒート1とヒート2、決勝の2ヒート総合成績で各クラス15位以内となったライダーが出走できる15分+1周のIAオープン決勝が設定された。
HSR九州のモトクロスコースは、ハイスピードかつダイナミックなレイアウトを特徴としてきたが、昨秋の大幅リニューアルで全長がやや短縮され、テクニカルなタイトターンも増えた。今大会も、春に続いてその基本的なレイアウトを踏襲しているが、ジャンプなどがリセッティングされた。本来の土質は阿蘇の火山灰に由来する黒土だが、セクションによっては山砂を搬入して整備されている。
大会当日は早朝から強めの雨が降り、決勝はマディコンディションでのレースに。走行と降り続く雨の影響で、路面状態は次第に悪化していった。
Westwood MXは今季、全日本最高峰クラスのIA1に「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」から参戦する富田俊樹選手(#1)と渡辺祐介選手(#3)、ホンダサポートチームの「Honda Dream Racing Bells」からエントリーする大城魁之輔選手(#4)、IA2クラスにカワサキのマシンを駆り「ピュアテックレーシング」から参戦する西條悠人選手(#8)とプロモーションライダー契約を締結。また、昨年度のIA2クラス王者で今季は「YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM」から選手兼監督としてIA1にフル参戦するジェイ・ウィルソン選手(#27)に、100%ブランドのゴーグルをサポートしている。
このうち渡辺選手は、今季開幕戦で転倒して欠場が続いていたが、今大会で復帰を果たした。まだ完璧な状態ではないが、実戦での調整を続けながら完全復活を目指す。
IA1クラス ヒート1
【IA1 ヒート1】
大城魁之輔選手(#4)とホールショットを奪ったジェイ・ウィルソン選手(#27)が先頭に立つと、オープニングラップをトップでクリア。2周目以降、ウィルソン選手は徐々にリードを拡大し、レース前半が終わる5周目までにアドバンテージは10秒以上に拡大した。大城選手は、約2秒後方に1台の引き連れながら2番手をキープ。レース後半、大城選手は左足首を痛めながらも、徐々にリードを拡大していった。そしてレースは、ウィルソン選手が優勝し、大城選手が2位。富田俊樹選手(#1)は1周目を7番手でクリアすると、7周目にひとつ順位を上げて6位となった。渡辺祐介選手(#3)は、予選で発生したマシントラブルの修復が間に合わず、チームの判断によりこのレースをリタイアすることになった。
IA1クラス ヒート2
【IA1クラス ヒート2】
スタート直後、大城魁之輔選手(#4)が2番手、ジェイ・ウィルソン選手(#27)が3番手の好位置を確保。しかし大城選手は1周目に順位を下げ、これで2番手に浮上したウィルソン選手は、2周目にトップ浮上を果たした。この段階で、大城選手は6番手、富田俊樹選手(#1)は9番手、渡辺祐介選手(#3)は10番手。しかし4周目、大城選手が転倒して11番手まで順位を落とした。先頭を走るウィルソン選手は2番手を大きく引き離せずにいたが、それでも2秒以上のアドバンテージをキープ。レース終盤、相手がややペースを落としたことでリードを拡大した。そしてレースは10周でチェッカー。ウィルソン選手が優勝し、早々とチャンピオンを決定した。富田選手は8位、大城選手は9位、渡辺選手は10位となった。
IA2クラス ヒート1
【IA2クラス ヒート1】
西條悠人選手(#8)はスタートで大きく出遅れ、1周目を14番手でクリアする苦しい展開。2周目には12番手、3周目に11番手に順位を上げた西條選手は、4台による縦に長い8番手争いに加わった。しかしレース後半の7周目に転倒を喫して、12番手に後退。これにより単独走行となってしまった。そしてレースは10周でチェッカー。西條選手は12位に終わった。
IA2クラス ヒート2
【IA2クラス ヒート2】
西條悠人選手(#8)は再びスタートで出遅れたが、それでもオープニングラップの混戦で順位を上げて1周目を11番手でクリア。しかしその後は、雨に加えて前走車が巻き上げる泥の影響による視界不良もあってペースを上げることができず苦戦した。ベストラップタイムで勝るライバルたちにも追いつけず、最終ラップにはひとつ順位を後退。西條選手は悔しい12位となった。
IAオープン
【IAオープン】
ジェイ・ウィルソン選手(#27)は、オープニングラップに1台をパスしてトップに浮上。そのまま3~4秒のリードを奪った。大城魁之輔選手(#4)はスタート直後こそ3番手を走っていたが、8番手まで後退すると、2周目に転倒して後続に轢かれ再び足首を痛め、ここでリタイアとなった。5番手を走行していた富田俊樹選手(#1)も、大城選手と同じ周に転倒。こちらはレースに復帰できたものの、大きく順位を落としてしまった。この2周目、渡辺祐介選手(#3)は9番手を走行。翌周にはひとつ順位を上げると、7番手に迫った。トップのウィルソン選手は、3周目には2番手に約3秒差まで迫られたが、4周目以降にスパートしてリードを拡大。そしてレースは8周で終了となり、ウィルソン選手が再び完全優勝を飾った。渡辺選手は5周目にもひとつ順位を上げて7位。富田選手は12位まで追い上げてゴールした。西條悠人選手(#18)は、マシンパワー差があるIA1勢を相手に奮闘したが、ポイント獲得圏外の18位となった。
ジェイ・ウィルソン選手(#27)ヒート1=優勝/ヒート2=優勝/IAオープン=優勝
「マディコンディションのレースで、スタートを決めることが重要でしたが、どのレースでも確実にそれができたと思います。ヒート2ではシリーズタイトル獲得を決定することができ、やはり最高の瞬間でした。オーストラリアから一緒に日本へ来てくれた妻や娘、レースを支えてくれているヤマハやスポンサーの方々、日本で応援してくれているファンの方々にも感謝しています。そして、このチャンピオンを100%のゴーグルを着用して獲得できたこともうれしく思っています。今回は酷い雨のマディコンディションだったので、クリアのレンズを使用し、ティアオフをしっかり準備して臨みました。スタートが順当だったこともありますが、ゴーグルトラブルは一度もなく、それも勝利につながりました」
大城魁之輔選手(#4)ヒート1=2位/ヒート2=9位/IAオープン=DNF
「決勝ヒート1の中盤にジャンプでミスしてケースしてしまい、転倒はしなかったのですが、着地の衝撃で左足首を痛めてしまいました。やった直後にジャンプを跳んだら、これはダメだ……となって、そこから先はジャンプを跳ばない走りに切り替え。でも、意外とペースは落ちず、2位でゴールできました。これならヒート2やIAオープンも大丈夫かと思っていたのですが、ヒート2は足のケガが影響したというよりも自分の走りが悪く、序盤に順位を落とし、しなくていい転倒でさらに後退。そしてIAオープンでは、やはり同じく自分のミスで転倒し、そこで後続車に轢かれて、足首をさらに痛めてしまいました。予選から、スピードもフィジカルもかなりいい感じだったので、結果につなげられなかったことが悔しくてたまりません」
富田俊樹選手(#1)ヒート1=6位/ヒート2=8位/IAオープン=12位
「今回の結果はケガや体調不良などによるものではなく、単純に自分がこのコースコンディションにまるで対応できなかっただけ。ヒート1はスタートが悪くて、ヒート2とIAオープンは転倒により後退。まるでいいところがなかったように思います。ヒート1とヒート2は、あまりに酷い雨とマディコンディションで、使用している100%のゴーグルをロールオフとラミネートのティアオフのどちらにするか、事前にかなり悩みました。ヒート1はロールオフで走ったのですが、結果的にはラミネートが正解だったのかなとも思います。というより、あのコンディションだとどちらを選んでも、スタートで出遅れたら厳しかったのかもしれませんが……。なんにせよ、残り2戦で自分の力を出し切りたいです」
渡辺祐介選手(#3)ヒート1=DNF/ヒート2=10位/IAオープン=7位
「開幕戦の決勝で負傷し、そのまま早々とコースを去ることになってしまったので、ようやくレース後のコメントを残すことができます。予選でマシントラブルが発生し、チームスタッフが一生懸命修理してくれていたのですが、今大会は変則的なスケジュールで予選終了からヒート1までのインターバルが非常に短く、改善することができずにキャンセルしました。ヒート2までに修復は完了したのですが、予選からヒート2の間にコースコンディションが完全に変わっていて、ヒート1を走っていない自分には対応しきれませんでした。IAオープンは、それと比べれば上位とはいえ、まだ本来の走りにはほど遠いのですが、そもそもこの大会は、残り2戦をしっかり戦うためレース勘を取り戻すことが大きな目的だったので、結果はあまり気にしていません。今回からFLYの2024年モデルを着用。本当は晴れでお披露目したかったのですが、それは次戦に持ち越しです」
西條悠人選手(#8)ヒート1=12位/ヒート2=12位/IAオープン=18位
「予選は苦手なタイムアタック方式で、ぎりぎりでラストチャンスレースを避けてダイレクトで決勝へ。とはいえ、コースコンディションはどんどん悪化しているし、予選結果はあまり関係ないだろうと思って決勝に臨みました。しかしその決勝も、本領発揮できないまま終了。どのレースもスタートがまるで決まらず、このコンディションで出遅れてしまうと、あとは何もできずに終えるだけという感じでした。スタート練習にはもちろん取り組んでいて、しかも練習ではできているのですが、それを決勝で発揮できずにいます。練習と本番でどこが違うのか自分でもわからず、やや困惑しています。開幕戦で勝利したコースだし、ここで再びいい流れを……と思っていただけに、かなり焦りを感じています」