【全日本モトクロス選手権 レポート】
2024 D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ
第7戦 TOKIO INKARAMI Super Motocross
2024年9月29日(日)
埼玉県/オフロードヴィレッジ
天候:曇り一時雨
気温:23度
コースコンディション:ドライ
観客:7,062人
今季は全8戦で競われる2024年の全日本モトクロス選手権シリーズは、いよいよシーズン終盤戦を迎え、第7戦が「TOKIO INKARAMI Super Motocross」として埼玉県のオフロードヴィレッジで開催された。今大会は2日間の日程ながら、全日本格式クラスはIBオープンクラスの予選を除くすべてのタイムアタック予選と決勝レースを9月29日(日)に実施する、ワンデースケジュールを導入。米国で活躍する下田丈選手がゲスト参戦するとあって、多くの観客が会場を訪れた。
荒川と入間川に挟まれた、アップダウンがほぼない河川敷に設けられたコースは、下田選手の参戦に合わせて完全リニューアル。ビッグジャンプや連続ジャンプ、リズムセクション、タイトターンを中心に構成され、コース幅がかなり狭い、スーパークロステイストのレイアウトが採用された。
日曜日早朝に雨が降ったことなどから、朝の路面は土に十分な水が含まれた、やや滑りやすいがホコリの立たないベストコンディション。公式練習を兼ねたタイムアタック予選の時間中には小雨が舞ったものの、その後は曇天で、ほぼこれに近い状態が保たれた。ただしこの日の最終レースとなったIA2決勝ヒート3のみ、直前から降り始めた強い雨で、マディほどではないがスリッピーな路面となった。
Westwood MXは今季、全日本最高峰のIA1クラスでは「Team Kawasaki R&D」の能塚智寛選手(#7)と「YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM」の渡辺祐介選手(#12)、IA2クラスではヤマハのマシンを駆る「bLU cRU フライングドルフィン サイセイ」の浅井亮太選手(#7)と、プロモーションライダー契約を締結。ウエアやブーツやゴーグルなどのライディングギアを提供する。また昨年に続き、「YAMAHA FACTORY INNOVATION TEAM」からIA1クラスにフル参戦するジェイ・ウィルソン選手(#1)に、100%ブランドのゴーグルをサポートする。今大会には、ウィルソン選手がIA1のシリーズ連覇決定を賭けて臨んだ。
IA1クラス ヒート1
IA1クラスの決勝は、15分+1周の3ヒート制で実施された。そのヒート1では、サイティングラップで渡辺祐介選手(#12)のマシンにトラブルが発生。渡辺選手は遅れてスタートしたが、解消には至らずリタイアした。一方、ジェイ・ウィルソン選手(#1)は1周目に3番手まで浮上すると、レース前半はトップ2に3秒ほど離されたが、8周目から2番手に接近。能塚智寛選手(#7)は1周目11番手と出遅れたが、3周目には5番手まで順位を上げた。
9周目、完全に前のライダーを捉えたウィルソン選手は、翌周に逆転成功。抜いた相手も粘り強く、追撃を受け続けたが、ラストラップとなった13周目に相手が転倒し、ウィルソン選手は2番手でチェッカーを受けた。そしてレース後、トップの選手に1順位降格のペナルティが課されたことから、ウィルソン選手は勝利を収めた。能塚智寛選手(#7)は6周目に4番手まで浮上したが、9周目にひとつ順位を下げ、5位でフィニッシュした。
IA1クラス ヒート2
決勝ヒート2では、ジェイ・ウィルソン選手(#1)が1周目に3番手まで浮上。能塚智寛選手(#7)が5番手、渡辺祐介選手(#12)は出遅れて11番手からのレースとなった。2周目、ウィルソン選手は2番手のライダーに離されたが、3周目には再び接近。翌周、ウィルソン選手は2番手に浮上した。能塚選手は、前のライダーに3~4秒離されたが、後続に対しては同じく3~4秒のリードを確保。渡辺選手は10番手での走行となった。
レースが後半に入ると、ウィルソン選手と能塚選手ともに後続の接近を受け、ウィルソン選手は9周目に入るところで3番手後退。一方、能塚選手は10周目に相手がミスしたことで、再びリードを拡大した。11周目、2番手のライダーが転倒してウィルソン選手がポジションを回復。レースは13周でチェッカーとなり、ウィルソン選手が2位、能塚選手が5位、渡辺選手が11位となった。このヒートの結果により、ウィルソン選手の2年連続チャンピオンが決定した。
IA1クラス ヒート3
決勝ヒート3では、ジェイ・ウィルソン選手(#1)がホールショット。しかしコース前半で下田丈選手の先行を許して、ウィルソン選手は1周目を2番手でクリアした。能塚智寛選手(#7)は6番手、渡辺祐介選手(#12)は8番手からのレース。2周目以降、ウィルソン選手は少しずつトップに離されつつも後続を抑え、能塚選手は3台による4番手争いの集団に加わった。3周目、ウィルソン選手は3番手に後退。しかし翌周、再逆転を果たした。
5周目、4番手争いを繰り広げていた3選手のうち1名がミスし、能塚選手は5番手に順位アップ。3~4秒離れた4番手を追った。この段階で、渡辺選手は単独走行に近い8番手だった。レース後半、ウィルソン選手はトップの独走を許し、後続を数秒離して2番手キープ。能塚選手は単独5番手となった。しかし10周目に能塚選手は転倒して6番手後退。レースは13周で終了となり、ウィルソン選手が2位、能塚選手が6位、渡辺選手が8位となった。
IA2クラス ヒート1
IA2クラスも、決勝は15分+1周の3ヒート制で実施。そのヒート1では、浅井亮太選手(#7)はスタートで出遅れ、1周目11番手とやや苦しい展開となった。それでも浅井選手は、2周目に9番手まで浮上。8番手争いは3台による混戦で、翌周には一度10番手に後退したが、5周目に9番手復帰を果たすと、前のライダーを僅差で追った。
7周目、バトルに競り勝ち8番手のポジションを上げた浅井選手は、やや離れた前との距離を少しずつ詰めた。10周目、4番手を走っていたライダーが転倒したことで、浅井選手は7番手。この周、浅井選手は前を走るライダーに肉迫した。そしてラストラップとなった12周目に浅井選手が逆転成功。最後は相手を振り切り、浅井選手は6位に入賞した。
IA2クラス ヒート2
IA2決勝ヒート2の浅井亮太選手(#7)はまずまずのスタートを決めると、オープニングラップで1台をパスして4番手に浮上。2周目にはさらに1台をパスして、2番手と約3秒差の3番手となった。翌周、2番手の選手がミスしたことで、浅井選手ともう1台が接近。三つ巴の2番手争いとなった。
この中で浅井選手は、後続を引き連れながら4周目に2番手浮上。翌周から、浅井選手とライバルが2番手争いを展開し、さらに一度は抜いたもう1台が数秒差で追う状況となった。7周目、浅井選手は3番手に後退したが、遅れることなく2番手を追撃し、ラスト2周となった11周目には再び前に出た。しかしすぐに再逆転を許し、浅井選手は3位となった。
IA2クラス ヒート3
IA2決勝ヒート3は、直前に降り始めた強い雨により、一気に路面がスリッピーとなり視界が悪い、非常に難しいコンディションとなった。スタート直後からトップがコースアウトや転倒で入れ替わる波乱の展開となったが、浅井亮太選手(#7)は動じることなく1周目を2番手でクリア。2周目にトップ浮上を果たすと、2~3秒リードして周回を重ねた。
レースが後半に入ると、浅井選手は後続の接近を許し、8周目に入ったあたりからは三つ巴のトップ争いに。それでも、浅井選手はトップを守り続けていた。ところがラスト2周となった10周目に、浅井選手がミス。この間に1台の先行を許した。浅井選手は諦めることなくトップを追ったが、翌周に無情のチェッカー。浅井選手は悔しい2位となった。
ジェイ・ウィルソン選手(#1)ヒート1=優勝/ヒート2=2位、ヒート3=2位
「アメリカで活躍する下田丈選手と同じレースを戦えることを、とても楽しみにしていましたが、今回は自分のシリーズタイトル獲得決定も懸っていたので、リスクを減らすことも意識して臨みました。下田選手と十分なバトルができなかったことは残念ですが、IA2とIA1で3年連続チャンピオンを獲得することができ、常にハードワークを続けてきたチームには本当に感謝しています。100%のゴーグルは、IA1クラスを戦うようになってから2年間使用してきましたが、本当に何のトラブルもなく、IA1連覇の支えとなりました。日本はマディや高温多湿のレースも多く、そういう状況でも信頼して快適に使えることは、シーズンを戦う上でとても重要です。この大会は、ライバルたちの泥を浴びることも多く、ティアオフも大活躍。でも最終戦のSUGOでは、できることなら使うことのない位置でレースしたいですけどね。なんにせよ、これまで支えてきてくれたファンとスポンサーに、本当に感謝しています。日本、大好きです!!」
能塚智寛選手(#7)ヒート1=5位/ヒート2=5位/ヒート3=6位
「ここ数戦、自分の調子はなかなか上がらず……というより、これが現在の実力だと思います。この大会も、トップ3がずば抜けて速く、4番手以下は拮抗しているような状態。パッシングポイントが本当に少ないコースだったので、あとはスタート勝負という感じでした。ヒート3は、周回遅れと絡んで転倒し、これで順位をひとつ下げましたが、それがなければすべてのレースで5位。ずっと同じようなところを低空飛行しているようで悔しいです。下田丈選手はともかく、全日本勢で現在のトップにいるライダーたちは、いずれも海外でのレースを多く経験。自分は、日本の中ではスピードがあるほうと思っていましたが、それでは歯が立たないし、彼らはそのスピードのままレース終盤まで走れるので、勝つためには相当の努力が必要だということを思い知らされています」
渡辺祐介選手(#12)ヒート1=DNF/ヒート2=11位/ヒート3=8位
「ヒート1は、ちょっとマシントラブルが発生してしまい、ほぼ走ることなくリタイアしました。ヒート2までにマシンを修復してもらって、戦列に並ぶことはできたのですが、ヒート1を走っていないことで気合いが入りすぎたのか、腕上がりの症状でレース後半からペースを上げられなくなってしまいました。ヒート3は、スタートでまずまずの位置を確保でき、ヒート2と比べたらペースも悪くなく、まずはしっかり走り切ることができました。ケガからの復帰後2大会目で、少しずつ調子もレース勘も戻ってきているイメージ。次はもうシーズン最終戦ですが、今日のヒート3で前にいたライバルたちに勝てるよう、地元での大会に向けてしっかり準備していきたいと思います」
浅井亮太選手(#7)ヒート1=6位/ヒート2=3位/ヒート3=2位
「ヒート1はスタートで出遅れ、しかも1周目にコースアウト。12番手あたりからの追い上げレースで、しかもペースはあまり良くなかったのですが、最終ラップまで必死に前を追い続けて6位でした。ヒート2は、スタート直後から前のほうを走れたのですが、そのことで少しカタくなってしまい、優勝には届かず3位。それでも、ここ数大会のレースと比べたらいい内容でした。そしてヒート3は、あと2周のところで初優勝を逃すという、これまでで一番悔しいレースになりました。雨そのものは、100%のゴーグルをレース前にしっかり準備してあったので問題なく、序盤からトップを走行。レース後半にはライバルの接近を許しましたが、それでも抑えられると信じていました。ところが、わずかなミスでこれまで跳べていたジャンプをクリアできず2番手後退。本当に悔しいですが、成績は上向きなので、最終戦こそ勝利につなげます!」