
【全日本モトクロス選手権 レポート】
2025 D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ
第1戦 HSR九州大会
2025年4月13日(日)
熊本県/HSR九州
天候:晴れ時々曇り
気温:14度
コースコンディション:マディ to ドライ
観客:2,297人
2025年の全日本モトクロス選手権シリーズは、熊本県のHSR九州で今季開幕戦を迎えた。今シーズンは年間7戦のスケジュール。今季は、決勝レースを完走したすべてのライダーに得点が与えられる新たなポイントスケールが導入され、1順位の違いによる差は薄まったが、優勝とリタイアでは35点もの差がつくことになる(従来は25点)。
開幕戦の舞台は、ホンダの熊本製作所に隣接するモータースポーツ&研修施設の一角にあるHSR九州。そのモトクロスコースは、2022年の大幅リニューアルで全長が短縮されてテクニカルなセクションが増加されたものの、ダイナミックなレイアウトを特徴としてきた。本来の土質は阿蘇の火山灰に由来する黒土で、山砂を搬入した整備が施されてきた歴史を持つ。今大会は日曜日のワンデースケジュールで開催。前夜から朝まで降った雨の影響で、当初のコースはマディだったが、日中は晴れ時々曇りで風も強く、これにより路面は急速に乾いていった。
Westwood MXは今季、全日本最高峰のIA1クラスに参戦する5名のライダーと、ウエアやブーツやゴーグルなどのライディングギアに関するプロモーションライダー契約を結び、そのレース活動をサポートする。このうち「Team Kawasaki R&D」の能塚智寛選手(#5)と「YAMAHA BLU CRU RACING TEAM」の渡辺祐介選手(#15)は昨年から継続サポート。昨年2勝を挙げた「Honda Dream Racing LG」の横山遥希選手(#2)とは、新たにタッグを組む。また、「Kawasaki PURETECH Racing」の西條悠人選手(#37)と「BLU CRU フライングドルフィン サイセイ」の浅井亮太選手(#38)は、昨年までのIA2からIA1にステップアップしたライダーとなる。
IA1クラス ヒート1
【IA1クラス ヒート1】
IA1クラスの決勝は、30分+1周の2ヒート制で実施された。ホールショットを奪ったのは横山遥希選手(#2)。しかし横山選手は2周目に2番手、3周目に3番手へと後退した。西條悠人選手(#37)は1周目7番手。能塚智寛選手(#5)、渡辺祐介選手(#15)、浅井亮太選手(#38)はいずれも大きく出遅れた。レース序盤、横山選手は2番手のライダーを僅差でマーク。両者が1台に先行されてからも、このライダーを僅差で追った。
能塚選手は3周目に8番手まで追い上げ、10秒ほど先行する西條選手を追ったが、5周目以降にペースが落ちた。レースの1/3が終了した5周目の段階で、渡辺選手は14番手、浅井選手は16番手を走行。ここからさらなる追い上げを狙った。レース中盤、横山選手は1台に背後へと迫られたが、9周目にこのライダーが転倒して後退すると、逆に前を走る3番手との距離を詰めた。ここで転倒したライダーは、西條選手のすぐ前で復帰。西條選手が僅差で追った。
10周目には、トップに立ったばかりのライダーがマシントラブルでリタイア。横山選手は3番手に上がった。レース終盤、横山選手はなおも前のライダーを追ったが逆転のチャンスを得られず、逆に残り2周でミスを連発。これにより、横山選手は15周のレースを3位でゴールした。西條選手は、前のライダーに数秒離されたものの、IA1の初レースを6位でフィニッシュ。能塚選手は7位、浅井選手はレース後半に追い上げて12位、渡辺選手は振るわず13位となった。


IA1クラス ヒート2
【IA1クラス ヒート2】
決勝ヒート2でも横山遥希選手(#2)は好スタートを決め、1周目を2番手でクリア。ヒート1以上の好発進となった西條悠人選手(#37)が1周目5番手で、これを能塚智寛選手(#5)が追った。渡辺祐介選手(#15)は同11番手。浅井亮太選手(#38)は再び大きく出遅れた。レース序盤、上位勢は縦に長くなる展開。この中で横山選手は、トップにじわじわと離される一方で、後続に対してはリードを築き、徐々に単独走行となっていった。
4周目、5番手を走行する西條選手に能塚選手が近づき、翌周に逆転成功。しかし能塚選手は6周目に転倒し、渡辺選手に次ぐ10番手までポジションを落とした。これで西條選手は5番手に返り咲いたが、なおも1台の追撃を受けており、7周目には再び6番手に。その後、このライダーには離されてしまったが、後方とは大きな差があり、これにより西條選手は単独走行の6番手となった。また、8周目には能塚選手が渡辺選手を抜いて9番手に浮上した。
2番手を走る横山選手は、9周目の段階でトップから10秒ほど遅れていたが、翌周からじわじわとその差を削り、13周目には約3.5秒差まで接近。しかしここで相手もペースを上げたため、横山選手は16周でチェッカーとなったレースを2位でゴールした。西條選手は、最後まで単独走行を続けて再び6位。転倒が響いた能塚選手は9位、渡辺選手は終盤にひとつ順位を落として11位、浅井選手は2周目20番手から追い上げを続けて13位となった。


横山遥希選手(#2)ヒート1=3位/ヒート2=2位

「THORのウエアとSIDIのブーツ、100%のゴーグルを装着する初めてのシーズンですが、フィッティングに違和感などはなく、安心して戦えています。ヒート1は、シーズンの開幕レースだしホンダのホームコースということもあり、正直なところ自分にプレッシャーをかけすぎてカタくなってしまったと思います。ただ、かなり難しいコースコンディションにうまく対応できなかったという課題も残ったとはいえ、開幕戦で両ヒートとも表彰台に立ち、総合成績でも2位を獲得できたのだから、それほど落ち込む必要はないはず。まだ6戦あるので、練習とテストを重ね、さらに上を目指せるよう努力します」
西條悠人選手(#37)ヒート1=6位/ヒート2=6位

「久しぶりのルーキーシーズンですが、意外とリラックスして開幕戦に臨めたし、自分の走りもできたと思います。今年は、リタイアすると大きくポイントを取りこぼすことになりますが、両ヒートとも成績をまとめられたことにも満足しています。今年から450ccマシンですが、フルパワーだとまだそこまで扱い切れない自覚もあるので、もっともマイルドなモードで走っています。それでも両ヒートともスタートで前のほうにいられたので、今後の自信にもなりました。もっと450ccマシンを扱えるようになって、早くトップ集団に絡む走りがしたいですが、ケガしたら元も子もないので、着実に進化していきたいです」
能塚智寛選手(#5)ヒート1=7位/ヒート2=9位

「ヒート1は出遅れ、その後は腕上がりでまったくペースが上げられなくなり、そのまま終わってしまいました。いわゆる1本ラインになっていたので、スタートで前にいられない段階で負けていました。ヒート2は、前のレースと比べたらスタート直後の順位も悪くなく、しかもカラダがうまく動いてペースも上げられていたので、表彰台圏内を狙える自信はあったのですが、6周目の転倒で台無しにしてしまいました。結果としては散々。おもしろくないレースでした。気持ちを新たに臨んだ開幕戦でしたが昨年と状況が変わらず、正直なところ凹みますが、そう言っていてもしょうがないので、次戦に向けて切り替えます」
渡辺祐介選手(#15)ヒート1=13位/ヒート2=11位

「昨年、一昨年と2年連続で開幕戦のレースで負傷し、これでシーズンを棒に振ってきたので、マディから一気に路面が乾いていった今回の難しい路面に対して消極的になってしまいました。一方で、やっぱり開幕戦なので力みもあり、その結果として腕上がりの症状が酷く、どうにもペースを上げられないまま走っていました。スタートも出遅れたし、本当に何もできずに終了。不本意な結果に終わりました。次戦は2週間後なので、調整に残された時間はわずかですが、会場は地元のスポーツランドSUGO。トップ争いに絡むなど、次こそおもしろいレースを見てもらえるよう、しっかり準備を進めます」
浅井亮太選手(#38)ヒート1=12位/ヒート2=13位

「マディコンディションだったタイムアタック予選は7位だったのですが、自分自身ではそれほど調子がいい感じはなく、淡々と走った結果でした。決勝は、両ヒートともにスタートがかなり悪く、そこから追い上げようにも雨の影響でラインがかなり限られていて、厳しいレースになってしまいました。初めてのIA1とはいえシングルフィニッシュはしたかったのですが、そこには届かず終了。昨年までとはいろいろ違う状況とはいえ、もう少し何かできたのではないかと反省しています。でも、2ヒートともまずはしっかり完走できたことで経験を積めたし、課題も明確になったので、ひとつずつ改善していきます」